勉強のために海外にも足を運ぶ。エルメスの工場に見学に行った時のことだ。「あそこの工場は、午後4時になったら閉める。あんなに注文が多いにも関わらずですよ。理由は職人の目が痛むからだそうです。やっぱり自家工場を持っているところは違うなあと思いました。プラグとダッチは自家工場以外にも下請けなどに仕事をさせるから偽物を作りやすいんですよ。偽物も同じミシン、素材で本物の職人が作るからです。しかし、偽物を見分けるポイントはいくつかあります。例えばハトメ。企業は下請け工場に商品の故で出すからです。1万個作ってもその1%ぐらいしか余分になく、同じハトメは作れません。そういうこともまず勉強し、研究する毎日です」。これこそがSさんのいうノウハウなのだ。単に資金があるとか、リストラされて退職金で始めようという安易な感覚ではできないようだ。だからこそ「知識を持ってからオープンしなければ失敗するんだ」と断言する。「私でよければいつでも教えてあげますよ」。こんなメッセージで締めくくったSさんの目はどこまでも温かかった。