三月末だというのに、そこに吹く風はすでに熱をふくみ、乾いた大地を吹き抜けていく。畑で腰を屈める女性のサリーがその風にぱたぱたと揺れる。強い陽射しを浴びて水牛が寝転んでいる。そのなかを、まるでメーターが壊れているのではないかと思うほど、アンバサダーは時速七十キロの速度を保ちつづける。シンはなかなか腕のたしかな運転手だった。態度も毅然としていた。途中の町で休憩をとった。僕らはそこでミルクティーを飲んだ。
[Pick Up]
東京ディズニーリゾート®-じゃらんnet
http://www.jalan.net/theme/park/tdr.html
飛騨・高山周辺の宿泊施設・宿 - じゃらんnet
http://www.jalan.net/220000/LRG_220200/
福山・尾道周辺のホテル - じゃらんnet
http://www.jalan.net/hotel/340000/LRG_340300/
シンにもすすめたが、彼は丁重に断った。ベナレス近くになると、道が不案内なのか、バスを待っていた学生を乗せて道案内をさせていた。午後三時。八時間アンバサダーに揺られた僕らは、ベナレスの鉄道駅に近いバスターミナルに着いた。シンはバックシーシひとつ要求してこなかった。僕にはひとつの不安があった。パトナーを出発してすぐ、シンはガソリンスタンドに寄った。ガソリンを二千ルピー分入れたが、そのときシンは掌にボールペンで『2000』と書いた。つまりそれを僕に払ってくれといっていた。普通、交渉した運賃にはガソリン代は含まれている。しかしここはインドなのだ。降りる段になって、ガソリン代は別料金といい出しかねなかった。僕はベナレスのバスターミナルの前で、残りの千ルピーを手渡した。彼はその瞬間、表情を緩め、「ありがとう」といった。それで終わりだった。彼はひと仕事を終えたといった態で運転席に戻った。無口だが、仕事は忠実にこなす。気持ちのいい男だった。